無以貴の旧聞

過去を知り、現在を思う事が出来れば良いな!

規 矩 準 縄

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  後漢時代の画像石に画かれた、古代中国神話の伝説上の皇帝伏羲(ふつき)が

 矩(まがりかね)を持ち、妻女が規(コンパス)を持つことにより、魑魅魍魎な自然 

 を、直線とか円にとらえて(技により自然を抽象化)自然を掌握し、地域の自然を生

 かした、様々な文化を造ったと言われています。

 

 飛鳥時代に隋・唐から百済を経由して日本に伝えられた、

規矩術(曲尺・コンパス・墨糸・水糸)により仏教寺院伽藍が造られ、

古代・中世・近世・近代・現代と規矩術が伴う木工技術の変遷が寺院伽藍造りの変遷で

もありました。

 

 現在でも、日本では木造による住まい作りが広く行われていますが、

木工技術の体現者である大工さんの出番が、以前より少なくなっており、

どうしてそうなったのか、私なりに考えました。

 

 自然状況を、直線とか円という、自然界には見られない事象を頭の中で描く、

自然の抽象化(論理・科学技術)は、時間経過と共に、常に新たな抽象により、

自然を論理的・科学技術的に捉える事を宿命として持っています。

 

 自然を抽象化して捉えることによって、自然から得られる恵みを、

大きく手に入れる事が出来る人が、すなわち人々は支配することでもあり、

祭事を司ることになりますが、新たな抽象化(新たな科学技術の進展)の出現により、

新たな司祭者が誕生することになり、歴史は常に、

新たな抽象化による新たな司祭者誕生の物語でもありました。

 

 そこで社会から忘れされようとしている大工さんはどうすれば良いのか!

 技(抽象)により社会が形成され、技(抽象)は社会が求めての技(抽象)であり、

伝統技法の技(抽象)の復権と言って、時代遅れの技(抽象)自慢をしていては

現実社会に受け入れられないのは当然のことであります。

 

 抽象化(論理・科学技術)で捉える社会思考法は、大陸で生まれた思考法で、

日本は四方を海に囲まれたモンスーン気候地帯であり、

大陸地域との生活形態とは大きく違っていることを知らなければなりません。

 

 大陸文化が移入されて300年ほど経過すると、

日本風とかの和風文化が形成されていることは歴史的事実であります。

 

 室礼・舗設(見世)という、抽象物をストレートに表現する大陸的思考法でなく、

季節に合わせた表現とか、一回性の表現(遷宮)、

仮に少しだけ回りくどい表現するとかによる、文化が伝統としてあります。

 技(抽象)は技(抽象)に溺れるのでなく、大工職人は技(抽象化)をもつ

抽象化された人間を見せるのでなく、技(抽象)以前の人間の具体性を社会に

見世ることが大切です。

 

 会社組織にいる抽象化100%の人よりは、過去の技を持って生きている大工職人は、

抽象化人間の度合いが少なく、人間としての具体性を多く、

保っているのが強みではなかろうか。

 

 抽象化が進行している社会では、抽象化の度合いが少ない

具体的体内を持って生活している人間が、身近にいることに対して、

人は具体的体内を持っている人と共感を得たいと感じて、
生きているのではないでしょうか。