塔婆に見る、モノ・ワザ・デザイン―資材・技術・設計
木材製材の歴史と塔婆建設から見える事、
古代:打割り製材では、大・中・小の三種類の寸法木材で塔婆を造る。
中世:縦挽き鋸製材により塔婆に合わせた部材寸法が得られる。
近世:社会が安定すると、多くの塔婆の需要予測に応じて規格部材が事前に用意されて
くる。
古代の塔婆は限られた部材で組立てるので、部材を生かした塔婆が建てられる。
中世では塔婆に合わせた部材を準備し、部材を生かした技により塔婆が建てられる。
近世は既成部材の種類が豊富にあり、部材を活かすより塔婆自体を美しくするような設計により建てられる。
日本の三名塔と言われる五重塔は、法隆寺(古代)醍醐寺(古代)浄瑠璃寺(中世)。
近世には多くの五重塔が造られたが、部材が市場品になり、地垂木・飛燕垂木の上端反りが市場規格外となり、垂木の反りが見られない塔婆が建てられ塔婆に味わいが感じられなくなる。
歴史フイルターを通すと、設計を重視した近世の塔婆よりは
部材の質感とか隠れた技が内包している古代・中世の塔婆が、多くの人々の共感支持を得ているのが日本文化の特質ではなかろうか。
現代の住まい作りにおいても、耐震・耐火・機能性・省エネ・経済性を重視した設計が図られているが、
日本の風土に生活する住まいとは、少し違うような感じがする。
寒暖差が大きく四季の変化が大きい風土で生活する人々は、
ある時点ある状況でのベストな解答を最良とするよりも、
生活は流れる時間と共にあるを根底にするのが、
生きるうえで大切なのでなかとの知恵を持って生活をしてきたのではないでしょうか。