民家と仏壇の位置
真言宗・禅宗等の宗派の皆さんの家の仏壇は、居間・茶の間・広間等の日常生活を営む「ケの場」にあり、見学先の家の方に話を聞いてみると、仏壇にお参りすることはあまりなく、お寺さんが来てお参りすることはめったにないとの事でした。
私が生活している地域の浄土真宗の仏壇は座敷「ハレの場」にあり、家人は毎朝仏壇にお参りしているし、月参りといって、身近な家人の命日には、毎月お寺さんが来てお参りをする習慣があります。
これらを言いかえると、自力宗教は日常生活での日々の信心・修行・精進が大切であり、日常生活を営む「ケの場」に宗教・仏壇が置かれていることになります。
他力宗教は日常生活には諸々の事案による矛盾することが多い世界であり、日常生活を超えた世界に心の平安があり、その思いを念じて生活すれば、日々の矛盾・苦難から逃れられると、日常生活から離れた「ケの場」に仏壇がおかれています。
鹿児島には113の麓集落という郷士が生活した村落があり。郷士の宗派は殿様が曹洞宗なので家来の郷士も曹洞宗でしたが、明治になり信教の自由化により、多くの元郷士は浄土真宗に宗派変えしたといわれています。宗派変えによる宗派の教えを念じて仏壇の位置が「ケの場」から「ハレの場」に移動している実例を見学会で見聞し感動した思いがあります。
秋目麓の郷士と網元である秋元家は、江戸後期に建てられた民家で、曹洞宗の時は「ケの場」の土間からの上り口の8帖に仏壇がありましたが、明治になり浄土真宗になると仏壇は「ハレの場」である二間続き奥の6帖に安置されることになりました。